丹生酒殿神社(にうさかどのじんじゃ)は、和歌山県伊都郡かつらぎ町三谷に鎮座する神社です。高野山を守護する女神・丹生都比売大神(にうつひめのおおかみ)が、最初に地上へ降り立った場所と伝わります。
紀の川のほとりにあり、高野参詣道・三谷坂の起点です。神社自体も世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の登録範囲に含まれています。秋は大イチョウが境内を黄色く染め、裏手には鎌が無数に刺さった御神木「鎌八幡宮」があります。
ひとことで言えば、高野山信仰のはじまりの地であり、伊都郡屈指の黄葉スポットです。

名前の由来と歴史
「酒殿」の名前はお酒を供えた伝説から
社名は、丹生都比売大神がこの地に降臨した際に酒を造り、神前に供えたことに由来すると伝わります。紀の川の水で酒を造ったとも、村人が酒を献上したとも言われ、伝承にはいくつかの形があります。
日本で最初に神様へ酒を捧げた神社のひとつとも言われています。
丹生都比売大神と高野山
丹生都比売大神は、紀伊山地北西部一帯の地主神です。約1200年前、弘法大師空海に高野山の地を授け、高野山の総鎮守になったとされます。
伝承では、女神はまずこの三谷の地(神社の裏山)に降り立ち、のちに山上の天野の里へ移りました。そこに鎮座するのが、紀伊国一之宮・丹生都比売神社です。つまり丹生酒殿神社は、丹生都比売神社のルーツの地にあたります。
創建年代は諸説あり
- 約1600年前の創建と伝わる説(丹生都比売神社の資料より)
- 平安時代中期にこの地に建てられたとする説(観光庁の解説より)
- 現在の神社は明治6年(1873年)に創建され、地元の3つの地区で守られています
いずれにしても、1000年以上の歴史を持つとされる古社です。
世界遺産との関係
2016年10月、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の追加登録で三谷坂が構成資産に加わりました。和歌山県教育委員会の資料では、この登録地点に丹生酒殿神社も含まれると明記されています。つまり神社そのものが世界遺産の一部です。三谷坂は、高野参詣道の中でも最も古い祈りの道とされています。
見どころ
1. 境内を黄金色に染める大イチョウ
神社のシンボルは、鳥居をくぐってすぐの大イチョウです。落葉すると、境内一面に黄色いじゅうたんを敷き詰めたような景色が広がります。
- 見頃:例年11月下旬〜12月上旬
- ライトアップ:黄葉の時期に、日暮れから22時ごろまで行われます(日程は年により異なるため、かつらぎ町観光協会にご確認ください)
- 樹齢:800年とも、300年以上とも言われています
写真を撮るなら、葉が落ち切る直前の、木にも地面にも黄色が残る数日がおすすめです。

2. 鎌が無数に刺さる御神木「鎌八幡宮」
社殿の横から続く小道を進むと、神社の裏手に鎌八幡宮があります。御神木はイチイガシの大木で、幹には三日月形の鎌がびっしりと打ち込まれています。
- 明治44年(1911年)に、兄井という地区から移されたとされます
- 江戸後期の地誌『紀伊続風土記』によれば、農林業を営む地元の人々の願掛けの方法でした
- 願いが叶うと鎌は幹に食い込み、叶わないと抜け落ちると伝わります
- 現在は木を守るため、鎌の形をした絵馬に願い事を書いて奉納する形が推奨されています
初めて見ると驚く光景ですが、地域の人々の切実な祈りの跡です。
3. その他の見どころ
- 華岡青洲ゆかりの燈籠:世界で初めて全身麻酔による乳がん手術に成功した紀州の医師・華岡青洲が寄進したと伝わる燈籠
- 紫陽花:6月下旬ごろが見頃
- 御朱印:授与の状況は事前にご確認ください

「酒の神社」とあわせて訪ねたい酒蔵・初桜酒造
神様に初めてお酒を供えた伝説が残るかつらぎ町には、今も酒造りを続ける蔵があります。それが、慶応2年(1866年)創業の初桜酒造です。
旧「川上」の酒どころを伝える最後の蔵
江戸時代、このあたりは「川上」と呼ばれる酒どころでした。和泉山脈からの清らかな湧き水と、冷え込む冬の気候が酒造りに向いていたためです。最盛期には33を超える酒蔵がありましたが、現在その伝統を受け継ぐのは初桜酒造だけとされています。
明治2年(1869年)に建てられた酒蔵を今も使い続けており、建物は国の登録有形文化財です。
丹生都比売大神ゆかりの天野の米で醸す
初桜酒造は、丹生都比売神社のある天野地域の酒米を使って酒を造っています。女神が降り立った三谷の地で酒が供えられたという伝説と、女神が鎮まる天野の米で今も酒が醸されていること。神社と酒蔵をあわせて巡ると、地域の物語がひとつにつながります。
高野山とも縁があり、修行僧に例外的に許された「般若湯(はんにゃとう)」の文化とのつながりも伝えられています。
主な銘柄
| 銘柄 | 種類 |
|---|---|
| 初桜 | 純米酒 |
| 聖 | 純米吟醸酒 |
| 亀鶴 | 純米大吟醸酒 |
| フルーツ酒 | 地元のみかん・桃などを使用 |
酒蔵では、陶器の徳利入りのお酒の試飲や、酒蔵の一部見学ができることもあります。訪問前に電話で確認するのがおすすめです。
| 名称 | 初桜酒造株式会社 |
|---|---|
| 住所 | 和歌山県伊都郡かつらぎ町中飯降85 |
| 電話 | 0736-22-0005 |
| 創業 | 1866年(慶応2年) |
| 公式サイト | hatsusakura.co.jp |
参拝のあとに酒蔵で地酒を選べば、酒殿の名にふさわしい一日になります。運転する人は試飲を控え、お土産として持ち帰りましょう。

世界遺産・三谷坂を歩く
三谷坂は、丹生酒殿神社から標高約450mの天野盆地にある丹生都比売神社まで続く参詣道です。丹生都比売神社の神主が両社を行き来した道で、「天野道」「勅使坂」とも呼ばれます。
| 距離 | 丹生都比売神社まで約5.5km(町石道と合流する六本杉の峠経由で約7km) |
|---|---|
| 難易度 | 勾配がきつく、雨上がりは滑りやすい。体力のある人向け |
| 主な見どころ | 宮滝、笠石、三面に仏が刻まれた頰切地蔵、紀の川を見下ろす眺望 |
| 帰り | 丹生都比売神社前から、かつらぎ町コミュニティバスで笠田駅へ(中学生以上200円) |
平安時代の1147年の記録にも、急だが木陰があり近道だったと記されています。高野山町石道より古くからあった可能性が高い道です。
アクセス・駐車場・基本情報
| 名称 | 丹生酒殿神社(にうさかどのじんじゃ) |
|---|---|
| 住所 | 和歌山県伊都郡かつらぎ町三谷631 |
| 参拝 | 参拝自由・無料 |
| 電車 | JR和歌山線「妙寺駅」から徒歩約25分(タクシー約5分) |
| 車 | 京奈和自動車道「紀北かつらぎIC」から約10分 |
| 駐車場 | 神社手前「まちなみの駅みたに」の無料駐車場(トイレあり、終日利用可) |
| 問い合わせ | かつらぎ町観光協会 0736-22-0300 |
黄葉シーズンの週末は駐車場が混み合う可能性があります。午前中の早い時間か、平日がおすすめです。
あわせて巡りたい周辺スポット
- 丹生都比売神社(かつらぎ町上天野):丹生都比売大神を祀る紀伊国一之宮で、世界遺産。酒殿神社で降臨の地を見てから訪れると、物語がつながります。
- 道の駅 くしがきの里(かつらぎ町滝):柿・桃・みかんなどの果物や柿の葉寿司、あんぽ柿を販売。土日祝限定のフルーツパフェも人気です。
- 四郷の串柿:11月上旬〜中旬に串柿が一斉に吊るされる風物詩。イチョウと同じ時期に楽しめます。

アウトドアショップ オレンジ(Orange)
かつらぎ町妙寺にある、全国からアウトドア好きが訪れる大型ショップです。代表の出身地であるかつらぎ町に人を呼び込むため、2014年にあえてこの地で開業しました。週末には1日500人以上が訪れることもあると言われる人気店です。
- ギア館:8000点を超える品ぞろえ。定番ブランドからレアなガレージブランドまで、宝探し感覚で選べます
- アパレル館:2018年オープン。人気ブランドのウェアやオリジナル・コラボ商品が並びます
- コールマンミュージアム:アパレル館3階。コールマンの歴史的製品を所蔵し、月2〜4回の限定公開
- ほりにし:大人気アウトドアスパイス「ほりにし」発祥の店。店頭には専用自販機もあります
- ヴィンテージカーやレトロなキャンピングカーが並び、週末はエアストリームでアイスクリームも販売
参拝と組み合わせるなら、午前に神社とイチョウ、昼から酒蔵とオレンジを回るドライブコースがおすすめです。
| 名称 | OUTDOOR SHOP Orange(アウトドアショップ オレンジ) |
|---|---|
| 住所 | 和歌山県伊都郡かつらぎ町妙寺488-4 |
| 電話 | 0736-20-1329(ギア館)/0736-26-8888(アパレル館) |
| 営業時間 | 11:00〜19:00 |
| 定休日 | 無休(年末年始を除く) |
※営業時間などは変更になる場合があります。来店前に公式情報をご確認ください。
よくある質問
Q. 丹生酒殿神社の読み方は?
A. 「にうさかどのじんじゃ」と読みます。
Q. イチョウの見頃はいつ?
A. 例年11月下旬〜12月上旬です。落葉して境内が黄色に染まるのは、11月下旬ごろからです。
Q. 鎌八幡宮は縁切りの神社?
A. 江戸後期の地誌『紀伊続風土記』によれば、もともとは農林業を営む人々が願掛けをする場所でした。願いが叶うと鎌が幹に食い込むと伝わる、祈願の御神木です。
Q. 駐車場はある?
A. 神社手前の「まちなみの駅みたに」に、無料駐車場とトイレがあります。
Q. 丹生都比売神社との関係は?
A. どちらも丹生都比売大神ゆかりの神社です。女神が最初に降り立った地が酒殿神社、のちに鎮まった地が丹生都比売神社とされ、両社は三谷坂で結ばれています。
Q. 近くで地酒は買える?
A. 同じかつらぎ町の中飯降に、1866年創業の初桜酒造があります。天野地域の酒米を使った純米酒「初桜」などを造っています。
参考資料
- 観光庁 多言語解説文データベース「丹生酒殿神社 歴史」
- 観光庁 多言語解説文データベース「鎌八幡宮」
- 観光庁 多言語解説文データベース「三谷坂」
- 観光庁 多言語解説文データベース「初桜酒造」
- 和歌山県 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の追加登録
- 和歌山県「県民の友」2025年11月号 かつらぎ町特集
- 和歌山県「和歌山だより」平成30年 ふるさと歳時記
- 和歌山県 三谷坂の景観資料
- 和歌山県 100年企業紹介「初桜酒造株式会社」
- 丹生都比売神社「丹生酒殿神社・三谷坂」案内資料
- サライ.jp「ご神木に無数の鎌が!恐ろしげな『鎌八幡宮』を訪ねてみた」
- BE-PAL「和歌山の名店『アウトドアショップ オレンジ』の店内はこうなっていた!」