花園ベース
音楽とアートで「花園」を再生する。行政から民営へ、キャンプ場運営が描く新しい集客のカタチ
和歌山県かつらぎ町花園地区。かつて行政が運営し、赤字に悩まされていた施設がいま、民間の手によって劇的な変化を遂げようとしています。
「花園ベース」「中南(なかみなみ)森林公園キャンプ場」、そして「グリーンパーク」。これらを一手に引き受け、音楽やアートを軸にした独自のコンセプトで集客を狙う代表に、その戦略と地域への想いを伺いました。
行政運営から「志」ある民営化へ
――もともと町営だった施設を、民間として運営されるようになった経緯を教えてください。
もともとは、かつらぎ町が直接運営していた施設でした。しかし、赤字が続き、行政としても「なんとかしなければならない」という課題を抱えていたんです。そこで一旦は「指定管理」という形をとっていましたが、それでも企業的な視点で見ると収益化は難しかった。
そこで、町が「財産を貸し付けるので、経費も運営も自分たちで持って、自由にやってみませんか」という公募(プロポーザル)に切り替えたんです。そこに僕らが手を挙げ、審査を経て運営を任されることになりました。1年目に「花園ベース」、2年目に「中南」、そして昨年度からこの「グリーンパーク」の運営が始まりました。
――ただ引き継ぐだけでなく、独自のコンセプトを打ち出されていますね。
単に「ほったらかしにしない」というだけでは意味がありません。僕らのコンセプトは、この花園というエリアが持つ豊かな観光資源をフル活用し、新しい層にアピールすること。そのキーワードが「音楽とアート」です。
演者とファンの距離を縮める「宿泊型」イベントの魅力
――今日もイベントが開催されていますが、音楽を重視するのはなぜですか?
都会のライブハウスでは味わえない「特別な体験」を提供したいからです。今日出演しているアーティストも大阪を拠点に活動していますが、ファンと一緒に泊まり、夜にお酒を飲みながら語り合い、自然の中で音を楽しむ。メジャーになってしまうと難しくなるような「演者とファンの近い距離感」を大切にしています。
山の中であれば音の制限も都会より緩やかですし、解放感が違います。来月には、世界中からゲストが集まる100人規模の結婚式も予定されています。自分たちでレンタカーを借りてこの山奥まで来てくれる。SNS時代の今、場所がどこであれ、魅力的な発信ができれば人は呼べるんです。
「入園料無料」という大胆な決断の狙い
――今年のゴールデンウィークから、大きな変更をされたと伺いました。
はい。グリーンパークの遊具エリアなどは、思い切って「無料解放」に踏み切りました。その代わり、出口に募金箱を置いて「面白い、応援したい」と思ってくれた方に、志としてお金を入れていただく形です。
――経営的には勇気のいる決断ではありませんか?
例えば家族4人で来て、入園料だけで1,600円かかるとなると、それだけでハードルになりますよね。それなら、入り口はフリーにして、その分、中でジュースを買ったり、お風呂に入ったり、別の形でお金を使ってもらいたい。
まずは「ここに来て楽しんでもらうこと」が先決です。結果として、集客を最大化させ、トータルでの売上につなげていく。それが僕らの考える、これからのキャンプ場経営のスタイルです。
「この地で腹をくくる」仲間を求めて
――最後に、今後の展望と課題を教えてください。
今はジビエの活用など、地域の課題をビジネスに変える試みも始めています。かつらぎ町地域おこし協力隊出身の坂本くんとも連携し、花園を盛り上げようと必死です。
ただ、やりたいことはたくさんあるのに、圧倒的に「人」が足りません。単なるアルバイトではなく、この花園という場所に腰を据えて、一緒に挑戦してくれるスタッフを募集しています。
「音楽が好き」「地方で何かを成し遂げたい」。そんな熱い思いを持って、ここで腹をくくってくれる仲間がいれば、この場所はもっともっと面白くなるはずです。
編集後記
行政のシステムに縛られず、民間のスピード感とクリエイティビティで過疎化が進む地域に光を当てる姿には、これからの地方再生のヒントが詰まっているように感じました。「入園無料」という実験的な試みが、今後どのような変化を巻き起こすのか、目が離せません。
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